どうしちゃったの? タミンさん

先日、「石鹸&ソープディッシュのセット販売」に向けて、『タミンさんのお店』(タミンさんの詳細については別ブログ参照)にオーダーをお願いしたことはすでにご報告した通りであるが、その仕上がりが私のマレーシア渡航と重なったため、受取りに訪れたのは予定の数日が経過した後だった。

にも関わらず、である。

まぁ、これも「すっかりお馴染みなこと」ではあるのだが、約束の期日をとうに過ぎたというのに「石鹸届いた? ソープディッシュ焼き終わった?」という私への問い掛けの返答は「ソープ・・・?」という健忘症を思わせるようなタミンさんのつぶやきであった。

ひょっとして、忘れてた・・・?
「ひょっとして忘れてた」ではなく、石鹸に関してなどはオーダーすら「かけていなかったことになってた」タミンさん。
その場で慌ててソープ製造工場へと電話を掛けた。
「今ごろかよっ?!」という突っ込みさえ虚しい。

「タミン、石鹸どうしちゃったの? この間電話してくれたんじゃなかったの?」
「なんかねー、作った石鹸ぜんぶタイに持って行っちゃったんだって」
「どうしてよ。私がお願いした石鹸までなんで持って行っちゃうのよ」
「この間のあれはねー、あっちの人がちゃんとしたオーダーだと思ってなかった。今度は大丈夫よ」

しばらく沈黙が流れた後、私はその痛ましい事実を自分の中で解決し、「で、タミンさんの方は? 頼んでたソープディッシュだけど」と、気を取り直し、だがしかし、私は再び詰問態勢に入った。

「もちろん出来てるよ」「どこにあるの?」「工場」「じゃ、見て来ていい?」「あー。焼き終わったんだけどね。まだ最後の作業が終わってない」

こっちもかよ。

「タミンさん、しっかりしてよ。きっかり三日で出来るって言ったじゃない」
「タミンねー、もう何やってるのよ。わからないよ」
「あれ? どうしちゃったの? なんだか投げやりじゃない?」
「もうぜーんぶダメ。ぜーんぶだよ。信じられないよ」

「一体なんの話?」とは、こうである。

新作のお香立てを大量に焼いたところ、大失敗してすべて処分することになったのだと言う。私のオーダーの話とはまったく関係ないことに、すっかり頭を抱えてしまったタミンさんなのであった。

それは大変気の毒なことではあるが、私は私で自分のお店の商品第一であるからして、だけど少しは話を聞いてあげないと申し訳ないかなと思い、「なにが原因だったの? どこをどう失敗しちゃったの?」と話を振るも、タミンさんはまったく上の空で「もうホント信じられないよね」だとか「ぜーんぶダメ。みんな捨てる」だとか、いつものことだが、さっぱり会話が成立しない。

そうだった。
タミンさんには変な気遣いなど必要なかったんだった。

その後はお互いに「結局、商品はいつ出来上がるの?」だとか、「タミン、毎日なにやってる? 座ってー、食べてー、寝るだけー」だとか、「あ、この焼物も可愛いね」だとか、「ビジネスって難しいよね、ホント。タミン、もう考えるの疲れたよ」だとか、やはり終始まともな会話に繋がらず、最終的にまたもや「三日後には用意出来るから」というアテにならない口約束だけ頂戴した。

今回やたらと自暴自棄的発言が多かったタミンさんがちょっと気になったが、お店を出る前に「ホント、美味しいもの食べるっていいよねー。食べるの大好き」と、なにがキッカケでそのような話に辿り着いたのかさっぱり覚えていない始末だが、食べて、寝て、ボヤく気力があるうちは、まだまだ「大丈夫」と判断し、お店を後にした。