ガムランボールを彩るオリジナルストラップ

朝から精力的に商談からの一日をスタート。
ここのオーナーとはすでにちょっとした顔なじみのため、アポなしで突然お店の方にお邪魔する。

決り文句になってしまったが詳細は別ブログ「Asian Zakka Moti〜シロウト集団のお店デキルカナ?」にてアップ済みだが、近々「石鹸とソープディッシュ」のセット販売を始めようと考えている。

ソープディッシュはここのお店で作ってもらえるとのことなので、バリ島で石鹸を作っているお店を紹介してもらうことになった。
三日後には用意出来るとのことなので仕上がりが楽しみである。

さて。
この日はいろいろと予定が重なってしまい、息つく間もなく次の目的場所へと友人と向かった。
ストラップ制作のためである。

このとき、バリニーズの友人に同行してもらったのには理由があった。

残念ながらこのストラップにいたっては、何百種類と山積みにされた細かいパーツの中から「これ!」と思ったものをチョイスし、さらにはそれらを「出来る事ならセンス良く」組み合わせてデザインをし、オリジナルストラップを制作しなければならない。

相手はシルバーである。
優雅でいて繊細な仕上がりを要求される。
ガイコツストラップを作り上げて大喜びしているような私に、そのような愛らしいものを作り出すことが出来るだろうか。

これはかなり厄介だな。

そういうわけで引っ張り出してきた友人。
性別:男性。ときどきスナックのママを思わせる魅惑的な仕草と口ぶりで「人生っていうのはさぁ」みたいなことを、延々とお話することが得意っていう「それって明らかに人選ミスじゃないの?」という突っ込みを受けてしまいそうなキャラクター。

しかし、彼と一緒に買付をしているときは料金交渉や品質なども含めて一番安心できるし、なにより商品に対する意見が比較的多く「一致」するのも彼なのだ。
二人で「これ本当にカワイイよねぇ」とウットリするときなんかは、まるで女子高生のようなノリであり、そういった物と出会うと私も彼も心からハッピーになってしまうのだ。

あわよくばこの「ママ」にMotiオリジナルストラップのデザインをすべて一任してしまおうと企んでいた私。

現場到着後、最初の方こそ二人で「あ! このパーツを使ったらとっても可愛いかも」「こっちもいいよ! アクセントとして使ったらいいんじゃな?」なんてハシャイでいたが、5分も経たないうちに、どちらかともなく「ふ〜」とため息。
あっという間に無口になってしまった二人であった。

他のパーツとの組み合わせをまったく考慮せずに「これ!」と思った単品のみを選ぶなら誰にでも容易に出来るのである。
肝心なのは、それらを組み合わせた後のトータル的なバランスと、さらにはそれがどれだけ「商品として魅力的なもの」に仕上がっているかであって、私たちはその段階に進まなければいけない手前で思考が完全にストップしてしまったのである。

逃げ出したい。
以心伝心だろうか?
ママが言った。

「頭が寝てるからタバコ買ってくる」

先にトンズラされてしまった。

しかも「こういうのメンドクサイよね」という言葉を残して・・・。

セリフまで先に奪われるかたちとなって取り残されてしまった私。
「頼れるのは己だけ」
今さらながら当然のことを思い出し、覚悟を決めてパーツの山に挑む。

すでにタバコをくわえながら戻って来たママは、私が選びに選んだパーツをおもむろに組み合わせ始め、「一緒に考えてくれてありがとうね」とお礼を言う私に「これはお店のためじゃないしぃー、あなたのためでもありません」キッパリと、「だったらオマエは一体なにしてる?」と、イライラに拍車をかけるような謎の言葉で私を混乱させるだけなのであった。

そしてようやく、私が光り輝くシルバーの山を制覇したとき、結局いっこもストラップを完成させることのなかったママが言った。

「この3つはいいよね。私好きよ。だけどこの最後の1つは・・・。でもいろんな人がいるからね、いいんじゃない?」と、完全に「上から物言う立場」へと見事な変貌を遂げていたのである。さすが、ママ。

パーツひとつひとつの単価など訊ねることもなく「良いと思ったもの」を作った私は、出来上がった物の価格をお店の人から聞いて驚いた。

提示された金額は、このお店にある一番小さなガムランボールと引けを取らない堂々たるプライスだったのだ。
「えっ?! なんでそんなに高いの?」と困惑する、私とママ。
ママも一緒になって驚いたことに笑いが漏れる。

お店の人の説明をママに通訳してもらったところ、その理由はこのような事であった。

ガムランボールも丁寧に手作業されてるけど、これらのパーツはガムランボールの面よりはるかに小さいよね? 小さな物にさらに細かい作業を施さなきゃいけないことがどれだけ大変かは理解できるでしょ?」

ごもっとも!!

予算の単価を上回ったため、残念ながらごくわずかな数しか購入することが出来なかったが、私は満足である。
「ママお墨付き」のオリジナルストラップを作ることが出来たし、なにより、私は自力であの山を登頂するのに成功したのである。

「自己満足な達成感」。
今はそれだけでいいや。
だって、クリアしなきゃいけない難関の山は、この後も途切れることなく連なっているから。
私の前に、圧倒的な存在感で立ちはだかっているから。