帳尻合わせ

偶然、行きつけのインターネットの店じまいに立ち会うことがあった。
つい先日のことである。

スタッフ君は、パソコンに打ち込まれた売上の数字と睨めっこしながらお金を数えた。
心配になるほど、何度も、何度も「あ! また忘れちゃった。幾らまで数えたんだっけ?」なんて言いながら。

そしてようやく売上金を数え終わったところで舌打ち。
どうやら、パソコン上で管理している売上と手元の合計が合わなかった様子。
だろうな。
またお金の数え直し。
険しい顔で舌打ち。

それを三度ほど繰り返したところで、観念してズボンのポケットから自分のお金を「本来あるべき正確な売上金額」として献上。
売上金の不足分は自己責任で支払うスタイルである。

そうか。
謎が解けたな。
先日のチョコレートアイスクリームも、きっとこんな感じで処理されているんだろう。
たぶん。

気の毒なスタッフ君と目が合った。
「もう、こんなんばっかだからストレスだよ」って言う。

だったらなんで、あの金髪のオッサンに言ってやらなかった。

わずかばかりの所持金も持たずに二時間以上もネットをやった挙句、会計のタイミングになって“手持ちがないから”と言って、一方的にバイクの保証書をデポジットとして置き立ち去ったあのオッサンに―――。

「こんな紙切れ置いて行ってもらったところで何の役にも立たない」と。

そのお陰で、たとえ一時であろうといえど、自分のわずかばかりのサラリーから身勝手な観光客のお金の立て替えまでさせられちゃって。
関係ない私まで腹が立っちゃったよ。

これはあくまで「ビジネス」なんだから、お金のことは「シビア」に処理するべき。
うちも「きっちり管理するべき仕事上のお金」に関しては、頭を抱えながらも一から順に丁寧に指導してるよ。
なかなか身につかないのが、確かに「ストレスの元」ではあるんだけどね。