頭上に注意

帰宅したら、別段面白くもないテレビ番組を見て、羨ましいくらいに大口開けて大笑いしている父の姿があった。いつものことだが、幸せそうでなによりである。

しかしその幸せそうな人であるが、なんだか今日はちょっと様子が違う感じである。
すっかり見逃していたが、よくよく見ると頭にぐるぐる包帯が巻きつけてある。

「どうしたの? それ」と突っ込むと、爆笑の余韻に浸っている呑気な父は、不幸な自分の現実について即答することができず(というか私の話などまるで聞いてないご様子)、代わりに妹が「職場で怪我してきたんだよっ!!」と、お怒り気味に答えてくれた。

昔から職場でのことを滅多に口にしない父であるが、この日も「怪我の原因を家族にちゃんと話さないスタンス」を貫くつもりらしく、母に詳細を訊ねても「知らない。上から物が落っこちてきたってしか言わないんだから」と、こっちもお怒り気味に答えるだけである。

「上から物が落ちてきた」って、イマドキの小学生だって、もうちょっときちんと物事ってやつを説明できそうなものだが、父はあくまで「小学生以上の状況説明能力」を発揮する気はないらしい。困ったものだ。

頭に強い衝撃を受けると、そのときは大した症状でないと油断していても、数時間後に事態が急変して取り返しのつかないことに・・・というケースも少なくないので、とても心配である。

医者にはすでに診てもらったらしいのだが、「レントゲンすら撮ってない」のだというのだから、余計に心配である。

素人判断でアレコレ言うべきことではないとわかっていても、縫わなければいけないほど強く頭を打ったのに「それで、抜糸はいつ?」との問いに、「え? 抜糸って必要なの?そのうち自然と溶けちゃうんでしょ?」なんて返答されると、ますます不安になるではないか。

今は抜糸をする必要のない糸もあるらしいけど、それならそれで説明あっていいはずだし、まったく何も「今後のことについて」説明がないってのはどうよ?

その外科医も外科医だが、父も父である。あまりに自分の怪我に対して無頓着ではないか?
呆れて「そんな病院信用できないから、明日また他の病院で診てもらえ」などと言うと、「そんなこと言ってないでなぁ、おまえたちも●●外科病院に行っておきなさい。●月●日には病院閉鎖だってよ」と、しみじみ言う父なのであった。

なんで用もないのに、さらには、一度も世話になったこともない外科医に会いに行かなければいけないのだ。頭打った影響が今頃出てきたか?
症状が深刻にならないよう祈るばかり(いろんな意味で)。