来てるんだよぉ〜

この一ヶ月、毎週末せっせと医者通いである。

皮膚科、眼科、耳鼻科・・・。医者ビンボーになりそうな勢いで通いつめている。

ここ数日、鼻がムズムズ騒ぎだしたので、診察されずとも原因はわかっていたのだが、去年は市販薬で手抜きをしてしまったので、今年はまじめに耳鼻科へ行くことにした。

いつもは、シャレた住宅街にある「常に軽いタメ語を使うお医者さん」に診てもらっていたのだが、場所柄もあるのだろう。診察料はお高いし、薬もやたら処方されて、診察料と薬代を合わせるとトンデモナイ金額になるし、なにより、私の描く「お医者さん像」とは遠くかけ離れたあの口調で話しかけられると、私も同調してタメ口たたいて症状をうったえるべきかどうか戸惑ってしまうので、なんだかますます耳鼻科というものから足が遠のくのであった。

そんなとき、大雑把な母の「花粉症の薬なんてどの耳鼻科いっても同じ!!」という、そりゃそうなんだけどデモそんなんでいいの?という言葉に押され、あまり流行っているとは思えない近所の耳鼻科へ行く決意をした。

初めて行く病院というのは不安である。

小心者の私は、たかだか花粉症(といっても症状は相当辛いものがあるんだけど)だというのに、「どうしてこんなになるまでほっといたんだ!!」と深刻そうに叱る医者の姿を想像してしまい、やはりお手軽な薬局にでも行こうかと後ろ向きに考えてしまう。

しかしすでに窓口に保険証も提出してしまったし、なにより、診察開始時間前だというのに、トップバッターとしてすぐさま名前を呼ばれてしまったので、仕方なく診察室に入る。

先生は「気さくなおじいちゃん」という風貌をしていてひと安心。「今日はどうしたの?」「私、花粉症なんですけど、ここ2〜3日よく鼻水が出るんです」「それはねぇ〜キテルんだよぉ」「はぁ・・・」「ちょっと診てみようか。あ、やっぱり花粉症だねぇ。今までどんな薬飲んでた?」「(どんなって言われても・・・。成分とかまで聞かれてるわけじゃないよね?)去年はずっと市販の薬を飲んでました」「市販のねぇ。薬飲んだりすると眠たくなったりする方?」「多少します」と即答すると、咄嗟にチッと忌々しそうに力強く舌打ちをする先生。

怖い・・・。

私に処方しようと考えてた薬が1/40人の確率で眠くなるものらしい。気さくそうなお爺ちゃん像が一瞬にして豹変したので、恐ろしくなった私は思わず「多少眠くなっても問題ありません」と助け舟を出す。すると先生、表情をぱぁ〜と明るくして「そう? だったらね、これ出すからね。あんまり眠くなるようなら半分にして飲んで」と、気さくなおじいちゃんに戻りましたとさ。めでたし、めでたし。

飲み薬を処方して診察を終了させそうな気配だったので、「先生、点鼻薬とかは?」と聞くと、「使いたいの? どれがいい?」と、診察台の上にずらっと置かれた5種類ほどの点鼻薬を見せてくれる。

どれがいいの?って。選ばせてくれちゃうの?

しかも先生、「あのね、これが一番高いやつ」って、それしか情報くれないし。

「どれがいいんだかわかりません」と、正直に答える。先生続けて「(薬は)何日分欲しい?5日間? 10日間?」

「一ヶ月!!」

本心はそうだった・・・。

でも、また舌打ちされたら嫌だなぁって思ったから、「二週間で・・・」と、希望を半分にまで削ってしまった。私は二週間後、また同じ耳鼻科を訪れるだろうか? 結局タメ口先生に回帰しそうな気がする・・・。