フリーダム

お店のスタッフ・ワヤンには、明日、3歳の誕生日を迎える息子さんがいる。

ここ最近、閉店になる頃を見計らって、おじいちゃんやお父さんと一緒にバイクにまたがって、お母さんを迎えにやって来る。

私が外国人であるというのもあるが、元々「人見知り」な息子は、私とは一切目を合わせないのはもちろん、お母さんがどんなに別れ際の「バイバイ」を強要しようとも、私に手を振ることなどなかった。

しかし最近ではようやく慣れてくれたのか、「バイバイ」も積極的に、プラスアルファで笑顔まで見せてくれたりする。

「元気?」「うん」って、かんたんな挨拶も交わせるようになった。

大好きなお母さんを迎えにやって来る愛らしい息子に、私は店内に置いてあるキャンディーを「ひとつだけ好きなのを取っていいよ」と差し出す。

すると、あろうことか「ひとつ」の部分を特に強調したにもかかわらず、息子は3つもキャンディーを鷲づかみだ。

「おい! ひとつって言ったろ!!」

大人気なく大きな声を出してしまった。

お菓子などの甘いものは、その家庭家庭で与える分量などの決め事があると思っている私は「親の承諾なしには甘味なものを与え過ぎないこと」を心掛けている。

決して「ケチ心」で「いっこだけ」と限定したのではない。早とちりしないで頂きたい。

取り返そうとも思ったが、小さな手にがっちり握ったキャンディーを、時に「鬼だね」と言われる私だが、さすがに奪い返すことは躊躇われた。

「ちゃんと歯磨きするんだよ。ご飯もいっぱい食べるんだよ」と、優しいお姉さんを演じた私に、自由奔放な子供は言う。

「嫌だね!」

嫌「だね!」って表現部分は、確かに、私の意地の悪い私情を挟んだ、やり過ぎた表現方法だったかもしれない。

しかし、それはまぎれもない「やだ!」という拒否発言であった。

「んだとぉー」と、言い掛けたとき、危険を察知したのであろうか、息子はトトトトトッと、出口に向かって走り出した。

逃げるが勝ちである。

おじいちゃんとお母さんの間にサンドされて、息子は片手にキャンディーをがっちり握って「ばいばーい」と、あっという間にバイクで走り去って行った。

ふん。

せいぜい今のうちに足かせのない自由を謳歌しとくがいいさ。

なんて言いながら、息子の誕生日には何をプレゼントしようか? と、やっぱりケーキとかスウィーツなんかがいいのかな? とか、そんなことを考えている私なのであった。