ピロウ
もうすぐ午後八時になろうかという平日の車内。
久々に乗り合わせたその時間帯は、仕事を終えたサラリーマンやOLで混雑する「お疲れタイム」だ。
だから「少しは寛容になろう」と思うのだ。いつだって。
だけど私だって疲れている。
そんなとき、見ず知らずのオッサンに、自分よりはるかに体格のいい青年に、香水の匂いが少々キツめな女性に、「さぁ、心置きなく私の肩に寄り掛かってお眠りなさい」なんて心境にはなれない。
頭をドスンと押し付けられた途端、不機嫌な顔になってしまう。
精一杯ガマンして、押し退けることなどほとんどしないけど、だけど、不快な気持ちが充満してしまって、精神衛生上とても良くない、こういうのって。
こ、こういうのって・・・・・・。
そして今日もまた、私は見ず知らずの「お疲れさん」のもたれ掛かってきた頭を、自分の降車駅まで40分ほど支え続けた。
なんのための辛抱だかわからない。
こういうことがが久々に、本格的に始まることを告げられた、めでたいんだが、気が重いんだかっていう、ほろ苦い肩枕。