愛嬌のあるアロマポット?

大袈裟な話ではなく、部屋にニオイが染み込むのではないかというほど、私のバリ滞在中の生活にはお香が欠かせなかった。

「アロマオイル」というものの存在を知ってはいたが、ライターひとつでお手軽にお香が焚けることに比べると、ロウソクだの水だのオイルだのと、準備しなければいけないものがいろいろとあり過ぎるアロマオイルは、面倒くさがりの私にとっては手間のかかる「厄介モノ」という認識でしかなかった。

ところが、出会ってしまったのである。

その間の抜けたような容貌だけで、ほっこりと気持ちが和らいでしまいそうな、ノンキな雰囲気を醸し出すアロマポットに。

私は、この外見だけで十分に心を惹きつけられてしまい、アロマポット本来の使用目的などまったく無視し、部屋のインテリアとして飾って置こうと考えていた(飾るというか、私の手にかかってしまうと、それは放置という意味に変ってしまうのだが)。

すると、そのアロマポットの製造元であるお店のオーナーが、「このアロマオイルをサービスで付けてあげるよ。とってもいい香りがするよ」と言う。

私は調子に乗って「ロウソクもサービスしてください」とお願いしてみたが、「自分でスーパーで買うように」と拒否され、だったらオイルをもう一種類プレゼントしてください、しょうがないなぁ、なんてやり取りをして、私はついに「アロマオイル初体験」の第一歩を踏み出すことになった。

がさつな私は、1〜2滴で事足りるオイルをドボドボとその何倍もの量を注いでしまったり、ロウを垂れ流してしまったり、水を枯らしてしまったりと、失敗の連続ではあったものの、お香とはまた違った、やわらかく、優しく香るアロマオイルにすっかりはまることとなった。

帰国後、妹に「このアロマポットすっごくいい顔してない?」と自慢げに画像を見せると、返ってきたのは「なにこれ? ヘンなカオ」という、まったくもって予想外で、失礼な言葉であった。

さらに「ぷぷぷ」というバカにしたような妹の笑いは、「すっごく気に入っちゃったから、店舗販売用としても購入したんだ」という私の告白を遮る結果となった。

どうなんだろうか?

味わい深い顔つきをしていて、「アリ」だと思うんだけどなぁ、私は。