ハッピーバースデー★インドネシア

そういえばここ一週間ほど、街中で頻繁に、インドネシアの国旗を目にする機会が増えた。
このとき私は初めて、インドネシアの国旗が日本と同じ「赤と白」のみで彩られたものだと知った。
この国にしてはやけにシンプルな国家のシンボルに、身勝手な違和感を覚えながらぼんやりとそれを眺めたものだった。
「今日はインドネシアの誕生日だからフェスティバルがある」と嬉しそうに、そう宿のオーナーが切り出すものだから「どんなフェスティバル? 踊りとか歌とか?」と身を乗り出すと、「木に登る」のだと言う。
「は?」
それはつまり、こういうことだった。
ピナンと呼ばれる木を丸太状に切ったものを地面に突き立て、その木のてっぺんに衣服や日常品、食料などを吊り下げる。
人々はその「ちょっとした宝の木」をよじ登り、そこにぶら下げられた品物を手に入れることが出来るのだと言う。
ふーん…。
「私、それ見るの好きだからぁ」
「見てるだけじゃなくて挑戦してみたら?」
「難しいだからぁ。出来ないよぉ」
「やってみなきゃわからないじゃん」
「オイルが塗ってあるからなかなか登れないんだよぉ。すべるだからぁ」
き、危険だろ、それ。
木の高さは8メートルにも及ぶのだと聞かされ、たかだか服や食べ物のために大怪我をするリスクを背負う人間がいるのかと、まともなことを考えてしまったりもしたが、「こう、ツルーンと滑るんだよねぇ」と、木を登るジェスチャーに加え、愉快そうに滑ってみせるカッコまで披露して大笑いするオーナーを見て、「あぁ、そうか。本気で賞品を取りにいくというよりシャレで参加するものなんだな」と、そう考えを改めた。
ヘタをしたら命を落とす危険性もあるのだから、シャレや「笑い」では済まされないとは思うのだが、ぶらさげられた賞品の中にバケツなどが混じっているのを見ると、やはりどうもそこには「笑い」のニオイがぷんぷんと漂ってくるのである。
ちなみに8メートルという高さは、インデペンデントデーでもある8月17日の「8」の部分から決められたのだという。
そのような苦しいこじつけに、この国の国民性を見るようで愛着を感じる一方で、「独立記念日」を祝って行われるにしては貧相で、どこまでもゆるーいイベントであることもまた、再認識してしまったのであった。