危険な遊び

「あらぁ。危ないわぁ。なんてことしてるのかしらっ」
「これは危険だぞ、いくらなんでも」
「注意してやらないとダメよ!」
「そうだな。二度とこんなことさせちゃダメだ!!」

まだ眠りからはっきりと覚醒したわけでもない私の脳が危険信号を発した。

「アンタ、また親に怒られるようなことしたみたいだよ」

父と母のテンション上がり気味な会話を耳にし、布団から這い出るのがさらに億劫になる土曜の朝。

「あ〜あ、なんだか検討もつかないけど朝から説教かぁ」

そう覚悟して体を起こし、そうして父と対面したとき、姪っ子の新作動画が添付されてきたので「見てみろ」と言う。

なんだ。そういうことか。

以前にもこの夫婦、朝から「あらぁ〜、こーんなに大声出して笑っちゃって」「コロコロよく笑うな、しかし」「見て! 体揺すって笑ってるわよぉ。カワイイこと」「体重そうだよなぁ。しかし笑い声大きいなぁ」と、「あんた達の声の方がよっぽどデカイよ!」と、突っ込みを入れられても致し方ない前科がある。

今日の「ひどく危険だ」という怒りの発言は、この「問題作らしい動画」の中に原因があるようだ。
姪っ子の安否も気になるが、ひとまず自分に難があるわけではないようなのでひとまず安心。
ホッ。

勧められた動画よりも、朝刊を持ち出して読み始めた私に、父親は積極的にパソコンを立ち上げ「これを見ろ」と、私の朝の習慣に強引に割って入ってきた。

仕方なくそれに付き合う。

その動画はゆるやかな、とてもゆるやかな坂の途中から始まっていた。

ベビーカーに座った姪っ子と母親が写っていた。

すぐに母親は、何を思ったのか、幼き娘が乗るベビーカーを手放し、そうして支えを無くした姪っ子は、ベビーカーと一緒に緩い坂道をスルスルゥーと、カメラを持って待ち構える父親の元へと滑りこんだ。

その距離およそ50メートルほど。

途中、興奮してか、足をバタバタさせた姪っ子は、これでもかと目を細めて満面の笑みを浮かべ、無事にカメラの元に到着するのだが、確かに、坂の途中を過ぎてしまうと、それまで姪っ子のすぐ横で伴歩していた母親と、「想定外」の事態が起こったら、それを未然に防ぐことは難しいかなぁ〜? という距離感が生じることとなり、「まぁ、朝から年寄りが大騒ぎするのも無理ないかなぁ」と、思える映像であった。

「なっ、危ないだろぉ?」と、同意を求める父親。

「こんなこと、またやられちゃたまらないからな。あの二人(夫婦)にみっちり注意してやらないと」と、張り切る父。

「オレは再犯を未然に防ぐ」くらいの勢いある父の言葉だが、どうやらこれ、動画撮影ようにたまたまやったんじゃなくて、「毎日の日課」らしいぞ。

動画のタイトルにそうある。

お爺さんとお婆さんのボルテージがこれ以上あがってしまわぬよう、この真実は私の胸にだけしまっておく。