父と娘のズレ
「おかえりなさい。しばらく日本でゆっくり休んでね」
バリ島から帰国した私に、心優しき友人たちからは、このような内容のメールを頂いている。
かと思えば、バリ島滞在中の私に送られてきた父親からのメールには、
『スタッフサービスの●●さんから連絡くださいと電話がありました。連絡先0120-022-022』
と、派遣会社の連絡先が記載されていたり、
『そろそろ真剣にこれから先の人生設計を考え始めてみたらどうでしょうか?』
などといった、問答無用に日本社会に一気に引き戻されるようなメッセージがあったりする。
しかし、だ。
トートツに雑貨屋などを始めてしまうような娘は、このような父親の切実な心情を真摯に受け止めるどころか、そのなんともいえない「ズレ」に、ネット屋でこみ上げる笑いを堪えるのが精一杯で、まともな返信さえもしないありさまである。
そうして、親不孝な娘はノコノコ日本へ舞い戻り、日がな一日パジャマ姿でメールチェックをしたり、ごろごろと寝そべりながら読んでる本が村上龍の「インザ・ミソスープ」であったり、活字を追うのに疲れた頃にはノンキに寝息を立てていたりで、そうしてきっと、そんな娘の姿を目の当たりにしている父親は、やりきれない思いでいるに違いない。
でも。
でも、父さん。
「つかの間の緩やかな休息」も、「そうそう甘くはない現状に追い立てられる現実」も、少しは踏まえているつもりだよ。
それは、父親からしてみたら決して「うまい時間配分」ではないかもしれないけれど、「娘の通帳残高3000円」と思い込んでしまう危うさを感じてしまうものかもしれないけれど・・・。