聖なる山へつづく道


本日はクリスマス・イヴです。なんだかんだと、この時期の町の雰囲気が好きである。慣れない仕事に自然と緊張を強いられた日々ーーー(たかだか一週間だけど)。リラックスの意味も込めて、銀座のオシャレなCafeでケーキとお茶と会話を楽しみ、イルミネーションを眺める。



自分だけ楽しむのもなんなので、なけなしのお金をはたいて家族分のケーキを購入した。ちなみに写真は、ホワイトチョコレートにナッツをからめたソースが自慢のフレンチトーストで、「カフェ・フレディー」オススメの12月限定特別メニュー。見た目より甘さの控えめなスウィーツです。


ところで。この日はテレビでも「クリスマス」関連の番組が多い。その中で私が気になったのは、フジテレビの「世界の絶景100選 聖夜に見たいクリスマスSP」である。

この番組では、私が「一度は泊まってみたいホテルのひとつ」と思っていたネパールの「ホテル・エベレスト・ビュー」が紹介されていたからだ。

標高3962メートルという場所にあるこのホテルを訪れたのは、俳優の谷原章介。段差の厳しい山道を、一日数時間からそれ以上の時間をかけて歩き続け、三日目にしてようやくそのホテルへと辿り着く。

彼は、見事で雄々しいエベレストを一望できるという「その地」に到達するまで、宿の類には宿泊せずにテントを張って過ごした。シャワーも浴びないので、身なりに気を使うことも出来なかった。

そうした日々の末、ようやく迎えたその瞬間。

彼は慌てて外へ飛び出すこともなく、まずは丁寧にひげを剃り、正装に身を包んで身なりを整え、ゆっくりと窓のカーテンを開け、あちら側に広がる光景を受け入れたのだ。

その景色の美しさと神神しさにも息を呑んだが、自分なりの礼儀をもってして、エベレストの神々と対面を果たした俳優の姿に、ちょっと感銘を受けた。その笑顔は、ヒマラヤの神のように凛として、やわらかなものに見えた。

ネパールはここ数年、政府とネパール共産党毛沢東主義派マオイストとの衝突により、内戦のような状態に陥っていた。死傷者も大勢出ており、とても安全な国とはいい難かったし、政治情勢は相変わらず不安定だ。

それでも11/21には、政府とマオイスト間で包括和平協定の調印が行われ、和平の道が一歩、開かれた。

どこの国へ訪れるにも、外務省や大使館、メディアの情報には十分に気を配るべきだと思う。

しかし。この番組を機に、ネパールという小国に対して興味を持ち、あの場所へと足を向けてくれる人がひとりでも増えてくれることを願わずにはいられない。

観光産業国であるネパールは、いま瀕死の状態にある。あるネパールの友人の言葉が蘇る。

「外国のメディアはちょっとした衝突やデモが発生すると大々的に“危険だ!”と報道するが、それが治まって平穏になってもそのことを伝えてくれることをしない。危険を知らせるのも大事だが、一度報道したことに対して最後まで責任を持って報道して欲しい」

それも確かに一理だ。常に「受け身」の状態にあっては、正確な情報を受信するのは難しい。

谷原章介が訪れた「ホテル・エベレスト・ビュー」は、聖夜に見たい絶景ホテルのナンバーワンに選ばれた。この地に、絶景だけではない何かがあることは、ブラウン管を通して覗いた一瞬だけではわからない。